日本人の知性に感動 焼け跡からの憲法草案

ruiikumi2007-05-11

 5月6日にはNHK教育テレビで、「ETV焼け跡から生まれた憲法草案」を見ました。2月15日放送分も見ましたが、2度目でも感動しましたね。

 政治的信条も、職業も違う7人の民間人。学者、ジャーナリスト、在野の評論家などでした。鈴木安蔵、室伏高信(55)、馬場辰吉(70)、高野岩三郎(75)、杉森孝一郎、森戸辰男、岩淵辰雄などでした。

 敗戦まもない昭和20年11月頃から憲法研究会を立ち上げ積極的に、構想を新聞などに発表していました。当時はGHQから言われ、政府側にも憲法問題調査会が憲法学者と官僚らでつくられていました。

 政治活動が自由になりましたたので、保守政党だけでなく、社会党共産党などの社会主義政党憲法草案を発表していました。これら在野、政府案を問わず新聞が大きく報道していましたので、国民各位は憲法について広く知る事ができました。

 GHQは鈴木安蔵たちの憲法草案に着目、独自に検討していました。政府案の提出を待っていたが、大日本帝国憲法の枠を超えるものではなく、戦後の民主化した日本を支える内容ではありませんでした。

 結局鈴木案がベースになり、GHQ側から日本国憲法案が提示され、政府、国会審議を経過し日本国憲法が1947年11月3日に交付されました。国会審議の中で、憲法研究会から代議士になった森戸辰男氏が、GHQ案にはなかった「生存権」(憲法25条)を追加し、日本人の手で修正案を可決しています。

 この番組を見れば、いかに安倍晋三なる人物達が「時代に合わない日本国憲法を改正しよう」などと言うことが愚かなことかがわかるでしょう。

 軍国主義言論の自由のない時代が長く続いた日本。敗戦で民主的な国づくりをするためには新しい憲法が必要でした。当時の政府が招集した憲法学者のレベルでは、大日本帝国憲法の枠組みを越えられない憲法草案しか出来ませんでした。それでは再出発は出来なかったのです。

 そのとき民間在野から斬新な憲法草案が出てきました。それが憲法学者鈴木安蔵氏らを中心とする研究グループの憲法草案でした。受け取ったGHQ側はその出来栄えのよさと、人権思想と国民主権で貫かれた憲法案がよくぞ軍国主義下の日本人がこしらえたものだと驚いたとも言われています。日本人の知性の素晴らしさを感じました。

 鈴木安蔵氏らは、大正デモクラッシーの指導者吉野作造氏の影響も受けています。また高知を昭和11年位に訪ね、植木枝盛憲法草案や、自由民権運動を担った活動家(面談者は高齢になっていたでしょうが)にもヒアリングをしておったそうです。

 他にもドイツのワイマール憲法の影響なども受けています。
 粗悪な改憲論や、党利党略の「憲法9条を守れ」だけではなく、きちんとした日本国憲法論がレポートされている秀作です。NHKは総合テレビでも再放送すべきです。

 多数の国民がこの番組を見れば巷の憲法論議が薄っぺらであることがわかると思います。
日本国憲法は間違いなく日本人の知性で制定されたものです。改憲論者のデマに騙されてはいけないと心底思いました。